すかさず五郎三郎が声を発した。「投資って返さにゃいかんとちゃうんですか?じゃぁ、この銭はワシらのもんじゃ無いっちゅーことじゃないですか。」これに対し権兵衛が、「いや、証文や誓
約書が無書が無いんでしたら返す必要も無いのでは?」「そういうもんなのか?」と話している二人を、「ちょっと静かにしてくれ。」と、制した隆行が、「大切なのは、投資の事では無い。」と言って、則正に向かい、「紹鴎様は、我らが持ち込んだ設楽焼を認めてくれたのだな?」「それは、良い物だと申しておりましたが…」則正が返すと、「ならば、良い!まぁ、他は仕方が無い。これまで商売したことは無かった訳だしな。」隆行が明るく言った事で、ようやく則正は安心したようだ。隆行に向かい、「何故、隆行様が自ら行かれなかったのですか?」と尋ねると、五郎三郎と権兵衛も頷いた。「あぁ、それは…。ちょっと見ていてくれ。」隆行は、そう言うと、おもむろに表通りに歩いて行き、近くの商家の前に立ち、中を覗くそぶりをした。たちまち、その店の用心棒らしき者達が隆行を警戒し始めた。