(では、行くか。)隆行は、近くにいた土居家の手勢達を呼び寄せると、「各隊の指揮官に伝えよ。当初の手筈通り、松明は、そのままとし、先陣の500を敵陣に寄せる。くれぐれも同士討ちには気を
法國轉運香港けるよう、徹底してくれ。」指示を伝えた。すぐさま、土居家の伝令が各隊に走る。伝令が走り去り、しばらくすると、精鋭を集めた先陣の500人が静かに、闇の中を蠢(うごめ)き始めた。隆行は、その様子を報告から確認すると、「本隊も寄せるぞ。この陣の事は、後陣に任す。」と言い残し、ワラを噛ませた馬に静かに跨ると、自らも1000人の部隊を率い、敵陣に近づいて行った。夜の闇を、松明も持たずに進む行軍である。各隊の先頭には、以前、Gに付いてきた三間の者達を配置しているため、粛々と進んでいくが、たまに、兵の転ぶ音や具足の擦れ合う音も聞こえてくる。隆行は、その度に、(やっぱり、少し無理があったか?)と、不安になるが、幸いにも、敵陣の様子に変化は無い。そんな心配を隆行が何度も味わっている間に、敵陣は着実に近くに見えるようになってきた。(ははは。ここまで動きが無いか…。相手の本陣がもぬけの空でなければ、こちらの思惑通りだ…。)