"「凄い……」
巧は目を見開いてサキカを見た。
「内緒にしてね」
サキカは氷刀を消ながら巧を振り返った。
オルス語を話せない巧であるが、もしジパング語を話せる者にあったらのこと
日本買樓 考えてのことだ。
「わかった」
巧はなんとなく事情を察したのかサキカに何も尋ねなかった。
「……戻ろうか」
「うん」
何もすることがなくなった二人は、ゆっくりと村へと戻りはじめた。
××××××××××××
同じ頃ガイアは――
『マスター、聞こえますか?』
『えぇ、聞こえてるわ』
宿屋で“月の光”のギルドマスター・ステラと念話で連絡を取っていた。
皆は外に行っているのか、部屋にはガイアしかいない。
『今、学園の授業の一環でリズの森の依頼を行うためにリズの森の近くの村に来ています』
『それは聞いてるわ。誰がどの依頼についているのかは、名簿を受け取っているのよ』
『そうなのですか……』
(結構忠実(まめ)なんだな……)
ガイアは学園長のラウを思い浮かべた。
『それで何があったの?まさかサキカに何かっ……!!』
『違います、違いますから落ち着いてください!!』
しかしステラは喚きつづける。
『誰がっ!何をっ!したのよ!!』
『だぁかぁらぁ、落ち着いてください!!』
数分後――
漸くステラが静かになった。
ガイアは咳ばらいをし、話を続ける。
『それでですね――』
ガイアは巧の事を話した。
『……そう』
ステラはそれだけを返してきて暫く黙り込む。
数十秒後、再びステラが話し出す。
『決めたわ!タクミを私の養子にするわ!!』
『ちょっ……本気ですか!?』
ステラは顔も知らぬ餓鬼を養子にすると言い出したのだ。
ガイアの反応は当たり前である。
『本気よ!!よし、そうと決まれば準備ね!!』
『マスター!?ちょっと待って下さい!!』
しかし返答は返ってこなかった。
ガイアは大きく溜息を吐き、「俺はもう知らね……」と無責任に放り出したのだった。
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